「最も並外れた歌手の一人で、天才に近い」(Sunday Times)
「地球上の全ての人間に必須のアーティスト」(Wire)
「無限に魅了される」(Mixmag)
アルゼンチン・ブエノスアイレス出身のシンガーソングライター。フォークトロニカやアルゼンチン音響派と呼ばれる独自のジャンルの先駆者として知られるフアナ・モリーナは最も独創的で先駆的なアーティストの一人だ。
彼女のキャリアの軌跡は独特かつ挑戦的なものだ。出身地アルゼンチンで大人気のコメディエンヌとして成功を収めたが、1996年に輝かしいテレビのキャリアを捨て音楽に専念する決心をした。その後、多方面から賞賛される音楽アーティストとして世界的に名を馳せた。
父はタンゴ歌手・作曲家のオラシオ・モリーナで、5歳からギターを習った。母の女優チュンチュナ・ビヤファーニェは音楽愛好家で、豊富なレコードコレクションから多様な音楽を教えた。1976年のアルゼンチンの軍事クーデターに伴い、モリーナ一家はパリに6年間亡命生活を送り、彼女の10代は世界各地の音に触れることでその世界は広がった。
アルゼンチンに戻ったフアナは本来であれば音楽の道を歩む決意だったが、彼女には物まねの才能があり、TVプログラムのオーディションを受け即採用。人気は急上昇し、3年後には自身のコメディ番組「フアナとその姉妹たち」を持つまでになった。ここでいくつかの面白いキャラクターを生み出し、この番組は大成功を収めアルゼンチン最高の人気コメディエンヌとなる。
大人気だったコメディアンの活動休止は産休が理由だったが、1994年に番組を打ち切り音楽に集中することを選ぶ。コメディアンの肩書きが強かったせいで、当初は「有名人の趣味的試み」と揶揄されたが、ここでロサンゼルス移住を決意。エレクトロニクス、ループなど実験的で催眠性のあるリズムなど実験的なアプローチの2ndアルバム『Segundo』のコアとなるトラックを完成させる。リリックの虫の知らせや夢といった隠喩が用いられ、感情やムードを体全体で表現するマジカルな世界観などもこの頃に形作られた。
世界的な評価を得た『Segundo』により瞬く間に国際的なインディー/エレクトロニカ/フォーク・シーンの寵児となったフアナを評価したのは評論家のみならずデイヴィッド・バーンやウィル・オールダムなど同業の大物たちも含まれる。3rdアルバム『Tres Cosas』はニューヨーク・タイムズ紙の年間ベスト10に選出され、彼女の音楽はフォーク、アンビエント、エレクトロニカの要素を取り入れた「フォークトロニカ」や日本では「アルゼンチン音響派」といった呼び名で親しまれた。
ソロアーティストとしても7枚のアルバムを発表。いずれも傑作との賞賛を得てきた彼女だが、近年ではアフリカ・コンゴのコノノNo.1/カサイ・オールスターズ、アメリカのロック・バンド、ディアフーフらと結成した“4大陸横断スーパーグループ”コンゴトロニクス・インターナショナルでの活動でも知られる。
日本では、2017年にジェフ・ミルズ×テリー・ライリー×フアナ・モリーナの各ツーマン公演も話題になった。ライブパフォーマンスではループ、その場で生み出されるエフェクト、そして巧みなアコースティック・ギターの演奏を組み合わせ、豊かな音と視覚的な体験を創り出している。