2019年の来日からすでに2年半ー。日本国内での局所的ブレイクで期待が日を追うごとに増幅されてきたサム・ゲンデルの再来日が、盟友サム・ウィルクスとの“サム&サム”揃い踏みというディープかつエクスクルーシブなデュオで実現する。
“サックスとベース”にフォーカスした2018年にデュオ名義の『Music For Saxofone & Bass Guitar』とその続編となる『Music For Saxofone & Bass Guitar More Songs』(2021)で知られる両者は、それぞれのソロ作で常にフィーチャーするなど、互いにとって常に重要なコラボレイターとして共演を重ねてきた。
交流はキャリア黎明期に遡る。古くはウィルクスの2014-2016と極めて初期のソロワークスを集めた『"Sings" (2014-2016)』での「WHAT IS HESITATION?」。ウィルクスのヴォーカルに並走するようにゲンデルがサックスソロを朗々と吹く。インディーポップのような曲調に今となっては驚かされるが、後半で聴くことができるアンビエント感ある即興に現在に至る源流は見え隠れしている。
サム・ウィルクスはルイス・コールらとの技巧派集団Knowerや、メジャー楽曲をファンクアレンジで聴かせるScary Pocketsなどでの演奏など幅広い音楽活動で知られるベーシスト。一方でGrateful DeadやPhishのインプロビゼーションに音楽の原点があり、ジャズの王道から外れたキャリアパスからアンビエントやヒップホップ、サイケデリックなどを内包し創造性溢れるアウトプットを築き上げて来た点でもゲンデルと通じるものがある。
2人が『Music For Saxofone & Bass Guitar』がLAのローレル・キャニオンとサンセット大通りにある2つのレストランで録音されてからすでに4年の月日が経過している。ウィルクスの昨年の2ndソロ『One Theme & Subsequent Improvisation』、全てが異なる趣を持つゲンデルの怒涛のリリース群からも“サム&サムの2022年の現在地”は予測不可能、極めて未知数で刺激的なものになりそうだ。
Text by Hideki Hayasaka